« 台湾を訪問! | トップページ | 東京オリンピックのエンブレム撤回 雑感 »

2015年8月22日 (土)

佐野研二郎氏のデザイン騒動 雑感

東京五輪のエンブレムを巡る騒動が飛び火して、佐野研二郎氏による様々なデザインについて「パクリ疑惑」が生じているのは、各種の報道で明らかなとおりです。

エンブレムについて騒動が持ち上がったとき、佐野氏はベルギーの劇場のロゴについて、「見たこともないし、似ていない」と断言しました。著作権を侵害しているかどうかは、「他人の著作物を拠りどころにして作られたか(依拠性)」と「他人の著作物と表現が類似しているか(類似性)」がポイントとなるため、この2つを否定したのは法的には正しい態度です。

一方、サントリーのトートバッグのデザインについて騒動が持ち上がったとき、佐野氏は一部のデザインをあっけなく取り下げました。これは、デザインの一部が「元ネタ」とほぼ一致したため、「依拠性」と「類似性」を否定することが困難だと判断したからでしょう。

過去にも、書籍の表紙デザインを担当したグラフィックデザイナーが、そのデザインの一部(羽根の絵)を無断でスキャニングされて「角川mini文庫」のロゴに流用されたとして裁判を起こしたことがあり、角川側が敗訴しています。(東京地裁 平成11年(ワ)第13459号)

Hane2
(被告のロゴ):最高裁判所のウェブサイトより

Hane1
(原告の表紙デザイン):最高裁判所のウェブサイトより

上記のようにコピペ(トレース)した場合は、アウトの可能性が高まりますが、そうでない場合は、セーフとなることも多いです。たとえば、「ケロケロケロッピ事件」では、以下の被告(サンリオ)のキャラクターは、著作権侵害にはあたらないと判断されました。「カエルを擬人化するという手法が広く知られた事柄であることは明らかであり、…ありふれた表現といい得る範囲に属するもの…」というのが、その理由です。(東京地裁 平成12年(ワ)第4632号)

Kerokero2
(被告のデザイン):最高裁判所のウェブサイトより

Kerokero1
(原告のデザイン):最高裁判所の
ウェブサイトより

テレビ番組などでは、佐野氏のデザインとそれに類似したデザインを並べたテロップを街の人に見せて、「似ていると思うか?」と尋ねるインタビューをしていますが、一般の人の素朴な感想を訊いて、いったい何がしたいのでしょう?

思うに、現在の騒動を見ていると、「法的な視点」(権利侵害に該当しているのか)と、「倫理的な視点」(法的に問題がなくてもモノマネの域を出ていないのか)と、「独創性の視点」(法的にも倫理的にも問題がなくてもデザイン自体に独創性がないのではないか)、という3つの視点がゴッチャになっている印象です。マスコミにも、もう少しポイントを整理して報道してもらいたいと願う次第です。

|

« 台湾を訪問! | トップページ | 東京オリンピックのエンブレム撤回 雑感 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 佐野研二郎氏のデザイン騒動 雑感:

« 台湾を訪問! | トップページ | 東京オリンピックのエンブレム撤回 雑感 »