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2014年7月17日 (木)

ベネッセ個人情報流出事件で登場。「不正競争防止法」とは?

日本史上最大の個人情報流出事件になると思われる、通信教育大手「ベネッセコーポレーション」の顧客情報漏洩事件の容疑者として、東京都府中市のシステムエンジニア(SE)・松崎正臣容疑者(39)が、本日逮捕されました。その容疑は「不正競争防止法」違反でした。

耳慣れないこの法律によって「営業秘密」が法的に保護されています。「営業秘密」として保護を受けるには、以下の3つの要件が必要です。

1.秘密として管理されていること(秘密管理性)
2.事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
3.公然と知られていないこと(非公知性)

ベネッセの顧客情報は、社内的には秘密として取り扱われていて、営業活動などで使える情報であって、かつ、公然と知られたものでもないため、上記3つの要件を満たすものとなります。

具体的な「不正競争」の類型は、2条1項各号で規定されていて、経済産業省知的財産政策室の資料に、次のようなわかりやすい表が示されています。

Fusei2

今回、松崎容疑者はこの表の④をやらかした、とされているわけです。不正競争防止法では、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」またはその両方が課せられる、という刑事罰も規定されています。著作権法の話となりますが、映画館の上映前に見かける「STOP 映画泥棒」の刑事罰と同じ内容であることに気がつかれた方も多いでしょう。

松崎容疑者は顧客情報のデータベースの管理を任されていたそうなので、次の21条1項3号が適用されて逮捕に至ったものと思われます。

 営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
 イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
 ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
 ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。

類型として「イロハ」の3つが挙げられていますが、松崎容疑者が自ら持ち込んだ記憶媒体(スマホとも報道されています)にコピーしたことから、該当するのは「ロ」でしょう。

産経新聞によると、『営業秘密の「不正入手」と「転売」を同時に立件するケースが多いが、今回は転売先の捜査に時間がかかると判断。転売した「開示」容疑での立件を後回しにし、当面の焦点を転売目的で入手した「複製」容疑に絞った』とのこと。「開示」容疑で再逮捕される場合は、次の21条1項4号が適用されることになります。

 営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者

ここで、松崎容疑者からベネッセの顧客名簿を購入した名簿業者も逮捕されるのかどうか気になる方も多いかと思われます。刑事罰に問われるのは次の21条1項7号のケースのみとなります。

 不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号又は前三号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

目的が二つに限定されています。さらに、松崎容疑者が上の表の④をやらかしたとしても、名簿業者は、⑤と⑥(悪意または重過失による行為)に該当しなければ、「不正競争行為」にすらなりません。名簿業者が口をそろえて、「ベネッセから流出した顧客情報だとは知らなかった」と話している理由も頷けますね。

もっとも、ベネッセの保有する顧客名簿には、ベネッセが埋め込んだダミーデータが含まれていると言われていますから、そのことを知りつつ名簿業者が転売していたなどの悪意が認定されれば、民事上・刑事上の責任が生じる可能性もあると思われます。

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コメント

こんにちは。
ダミーデータを埋め込むという手法は違法コピーを見つける為の1つの手法で、ソフトの世界では常套手段ですけど、
久しぶりに聞いて、ちょっと懐かしい感じがします。
おそらく名簿屋さんも、そのくらいは常識だと思うけど。
知らなかったのかな。いずれにせよ、
ダミーデータの存在を知っているかどうか関係なく、
転売業者は罪になるのではと思いますが、
どうなんでしょうね。
では。

投稿: yy | 2014年7月21日 (月) 06時35分

yyさん、久々にコメントをいただきましたね。

名簿業者が罪になるかどうかは、実際問題として、私の解説にある要件を満たすかどうかという点になると思います。

投稿: いなぽん | 2014年7月24日 (木) 06時25分

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