« 『すばらしき特殊特許の世界』の増刷分が届きました! | トップページ | STAP細胞問題と旧石器発掘捏造事件 »

2014年4月 2日 (水)

特許から見たSTAP細胞論文問題(その2)

森口尚史氏 「私は、これで非常に大変な目にあったわけなんです。ハーバードがウソついているわけですから」(『すばらしき特殊特許の世界』(太田出版)P.56)

小保方晴子氏 「改ざん、ねつ造と決めつけられたことは、とても承服できません。近日中に、理化学研究所に不服申立をします」(調査報告書に対するコメント)

現段階では、STAP細胞そのものが捏造だったのかどうかわからないので、森口氏と小保方氏を比較するのは時期尚早かもしれません。ですが、両者のコメントから同じような空気を感じてしまうのは、決して私だけではないでしょう。

さて、前回は、Nature論文投稿と特許出願のタイミングについて検討してみましたが、今回は後編として、その具体的な内容について触れてみたいと思います。

Staptimeline

まず、2012年4月、Natureへの最初の論文投稿の際に、小保方氏らは最初の米国出願をしています(米国出願1<61/637,631>)。この出願はその後に優先権を主張して国際出願(PCT/US2013/037996)をしているため取り下げられていますが、その内容は国際出願の優先権情報から窺い知ることができます。

それによると、米国出願1には実施例が1つしかなく(実施例1)、脾臓の血液細胞からSTAP細胞を作製し、それが様々な細胞になったことが書かれています。

なんと、この段階で既に、小保方氏の博士論文の画像(骨髄細胞由来の細胞)のコピペがそのまま使われています。理研の調査委員会の最終報告でも、2012年4月のNatureへの論文投稿時に、この博士論文の画像が使われていることが確認されています。要するに、最初から不正な画像が使用されていたわけです。(東工大の講演では、この点を見落としていました。)調査委員会はこれを小保方氏による「捏造」と断定しています。

Stap1

Natureから論文掲載を拒絶された小保方氏らは、翌年3月、Natureに論文を再投稿すると共に、2番目の米国出願をしています(米国出願2<61/779,533>)。この出願では、STAP細胞の存在を補強する実施例2及び3が追加されています。おそらく、Natureへの論文投稿においても同様の追加が行われたのでしょう。

ここで示された内容が、「TCR再構成」(リンパ球の一種であるT細胞におけるDNA組み換え)です。これは分化された細胞が初期化された証拠を示すもので、STAP細胞の存在の裏付けとなるものです。しかし、皆さんご存知のとおり、電気泳動実験を示す画像における「切り貼り」が問題となりました。Nature論文では第3レーンが他の画像からの切り貼りでしたが、特許明細書では第7レーンで同じ切り貼りを使っています。調査委員会はこれを小保方氏による「改ざん」と断定しています。

Stap2

このように、「捏造」とされた画像は2012年4月の段階で、また、「改ざん」とされた画像は2013年3月の段階で、既に存在していたことがわかります。Natureに実際に論文が掲載されるまでさらに9か月かかっていますから、普通に考えれば、その期間中に色々と実験をやったはずです。しかし、結局、新たな実験に基づいた画像は追加されませんでした。STAP現象が再現できなかったため、当初の不正な画像がそのまま残ってしまったと考えるのが自然でしょう。

そして、米国出願2の翌月、小保方氏らは国際出願をしています(米国出願1及び2に基づく優先権を主張)。ここで興味深いことは、米国出願1及び2において、ハーバード関係者を除いた日本側の発明者は、小保方氏、若山照彦教授(山梨大)、大和雅之教授(東京女子医大)の3名だったのに、国際出願の段階で、いきなり笹井芳樹氏(理研副センター長)が追加されている点です。

Stap3

国際出願の段階で、実施例4(STAP幹細胞に関するもの)が追加されているので、その発明に関わったという名目で笹井氏が追加されたのだと思いますが、「いきなりどうして?」との印象は拭えません。この頃には、実質的なNature論文の執筆者は笹井氏となっていたそうですから、何とか自分の名前も発明者として追加したいと考えたのでしょう。

こうやって特許出願の経緯とその内容を眺めてみると、報道や発表で流れている様々な情報が点と線で結ばれて、妙な納得感が出てきます。こういった特許の読み方もあるということです。

|

« 『すばらしき特殊特許の世界』の増刷分が届きました! | トップページ | STAP細胞問題と旧石器発掘捏造事件 »

コメント

こんばんは。。
先日の笹井氏の会見を配慮すると、この記事の続きはどうなるのでしょうか、興味がわきます。
では。

投稿: yy | 2014年4月29日 (火) 20時55分

笹井氏が言っているように、本当に「論文の仕上げ」だけをやったのだとすると、発明者にはなり得ませんから、矛盾したことをしていることになりますね。

この辺りの事情については理科大の講演でお話したいと思います。(もちろん、その後に記事としてUP予定ですが…。)

投稿: いなぽん | 2014年5月 1日 (木) 23時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 特許から見たSTAP細胞論文問題(その2):

« 『すばらしき特殊特許の世界』の増刷分が届きました! | トップページ | STAP細胞問題と旧石器発掘捏造事件 »