コムスンの介護保険事業を巡る一連の不正問題で、親会社であるグッドウィル・グループの折口雅博会長が、8日の記者会見以降、テレビの報道番組に出まくり、謝罪行脚しています。実は、私は10年前に折口氏の講演を見に行ったことがあるのですが、あの強烈なカリスマ性はどこに行ってしまったのか、冴えない言い訳に終始していました。(また、知らぬ間に石川五右衛門みたいな髪型になっていますし・・・。)
どうして折口氏の講演なんか見に行ったのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、当時、20代にして既にサラリーマン生活に疲れていた私は、何を血迷ったのか、起業に興味を持ち、大前研一氏の主催するスクールに通ったり、ベンチャー企業の経営者の講演を聞きに行ったりしていたのです。その中でも、折口氏の話は私に強烈な印象を残しました。
折口氏は、人口甘味料の工場を経営する裕福な家庭で生まれるものの、発癌性確認による法規制で工場は倒産。その後、極貧生活に陥り、両親も離婚。一家は生活保護を受けるまでになります。学費が払えず、陸上自衛隊の少年工科学校を経て、防衛大学校に入学。卒業後に任官拒否し、日商岩井(現・双日)に入社後は、当時一世を風靡したディスコ「ジュリアナ東京」の仕掛け人として名を馳せます。六本木のディスコ「ヴェルファーレ」を手掛けた後、現在のグッドウィル・グループを設立したのです。その波乱に満ちた人生に驚かされた私は、彼の本まで買ってしまいました。それが『起業の条件-若者文化からビジネスを生み出す方法-』(経済界)です。
今週末、時間があったので、ちょっとその本を読み直してみました。当時の折口氏は35歳。(今の私よりも若い!)当時の彼が自信とエネルギーで満ち溢れていたことは、その文面からも窺い知ることができます。面白いことに、彼の経営手法の問題点をも読み取ることができました。例えば、現在のコムスン問題は、同社の無理な経営拡大路線から発生したと言われていますが、10年前、既に彼はこんなことを言っています。
企業後の急成長は、いろいろな面でメリットをもたらす。まず一つには、圧倒的な市場制圧力を持つことができる。そのことは、私が現在手がけている人材アウトソーシング会社、グッドウィルでもまさに実践している。
・・・このように順調に成長しているのは、スタートすると同時に、支店数や従業員を一気に増やすことを目標にし、まさに実行してきたからだ。その結果、圧倒的な市場制圧力を手にすることができた。グッドウィルの事業を模倣しようと考える会社もあったが、それらを振り切って先頭を走り続けることができた。あまりのスピードに、彼らはついてこれなかったのだ。(44ページ)
このビジネススタイルが、介護保険事業には合わなかったということなのでしょう。ジャーナリストの田原総一郎氏は、「彼は記者会見で、なぜ介護事業をはじめたのか聞かれて、自分の父親の介護が大変だった経験から、介護事業をやらなければいけないと思ったと語っていたが、実はこれも嘘くさい。」とか、「これは儲かると思って、彼は事業をはじめたのだ。彼が父親のことを思って介護始めたわけでもなんでもなく、儲かるタイミングで事業を始めようと思ったわけだ。」などと指摘し、折口氏を糾弾しています。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070614_15th/index.html
『コムスンで介護を食い物にしたグッドウィル折口氏の“犯罪”(nikkei BPnet)』
しかしながら、私は、その動機は、まんざら嘘ではないのではないかと感じています。というのも、コムスンへの資本参加前に記された同書において、折口氏は以下のようなことを既に語っているからです。
また、これは私の個人的な体験から生まれた思いなのだが、在宅介護ビジネスも展開していきたいと考えている。父が亡くなるまでの三ヶ月間、介護のために泊り込んだ病院で、高齢者やその家族が抱える厳しい現実を目のあたりにした。日々、介護するなかで、その仕事がいかに重要で、かつ人々に求められているものであるかも分かった。近い将来、必ず実現したいと考えている。(134ページ)
単なる金儲けではなく、世の中のためにもなる事業だと考えていたようです。もっとも、単なるボランティアでビジネスをする人間はいませんし、当時は介護保険法案が国会を通る直前でしたから、大きなビジネスチャンスだと考えたのは間違いないでしょう。
また、田園調布の豪邸に住み、高級外車を乗り回すという折口氏の派手なライフスタイルも、世間の反発を広めているひとつの要因であるとは思います。コムスンの不正は確かに問題ですが、単なる嫉妬心だけで彼を叩いている人が多いのも事実でしょう。
こちらが成功を収めたり、金持ちになったりすると、本人の前では賞賛しても、陰では「偉くなって付き合いづらくなった」「そのうち、つまずくぞ」などと言って、転落するのを楽しみにしている。
だから、成功しているときこそ、注意しなければならない。強い嫉妬心を抱く人間に、どこで足元をすくわれるか分からない。
自分より下にいるか、自分と並んでいる相手に対しては、日本人は非常に寛容である。しかし、横並びを飛び出したヒーローに対しては、非常に手厳しい。ちょっとでもすきを見せようならば、待ってましたとばかりにバッシングする。(190ページ)
こんな感じで、10年前から日本人の国民性を既に十分理解していたようですから、折口氏にとってみれば、現在の逆境は想定内のことであるのかもしれません。なお、彼の人生のゴールはいったい何なのか、途中から気になって読み進めてみたところ、やはり最後の方に書いてありました。
最終的には、この資本主義社会のなかで大きな力を持ちたい。そうすれば、自分のやりたいことが自由にできるようになる。そのために、資本力と組織力をつけ、飽くなき起業拡大をしていく。(210ページ)
・・・ではなぜ、世の中で大きな影響力を持ちたいのか。
じつをいうと、それは私自身にも明確には分からないのである。しかし、あえて答えるとすれば、資本主義社会で力をつけ、社会・世の中のために事を為し、究極的には、そのことによる自己満足を味わって人生を終えたいから、ということになるだろうか。(211ページ)
なるほど。私の人生観とは随分と異なりますが、ただ何となく生きている人間が多い中、30代半ばにして、既にここまで考えていたとは、大変感心させられます。個人的には、折口氏が再起し、更なる活躍をすることを期待しています。
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